三人が黄金の杯に関するある約束をしたこの日から二週間ほど前のことである…。
カイロの古物商・ウッド商会の社長秘書として勤務している二十二歳のソフィァにとって、いかにも洗礼されたと思える身のこなしと、母国語のほかに五か国語をいとも簡単に操り、欧州は言うに及ばず中近東・アフリカ・アジアを自由に飛び回る、眉目秀麗のフランス人経営者・ミッチェル・ウッドは、憧れに近い。
ウッド商会の本社はフランス国内にあり、その支社は五十にものぼり末端の代理店を寄せれば全世界に散らばっていると言っても過言ではない。
古美術や貴金属を扱う会社としては世界でも有数の会社なのだ。
ウッド商会カイロ支社は、古美術品にかけてはインド・南米以上に重きを置く社長ミッチェル・ウッドのお気に入りの拠点である。
そのカイロ支社には彼女を含め三十人ほどの社員がいるが、女性は彼女を含めて十人ほどが勤めている。もちろんその多くは古美術品や貴金属販売に従事する女性たちだ。
ソフィアは大学で美術を専攻した上での採用であったが、社長秘書として採用されたのは端正な顔立ちとずば抜けたスタイルの持ち主であることが幸いしたのは当然だった。
さらに、勤務するようになってまだ二年が経つか経たないかであったが、呑込みの早さとまじめさは社長ミッチェル・ウッドにとっても満足できるもののようだった。
「社長。おかえりなさい。フランスのラメール商会から問い合わせのFAXがはいっております」
 外出中に入電した数枚の用紙をソフィァから手渡されたミッチェル・ウッドはその連絡事項に軽く目を通すとソフィアに言った。
「ムスタファという来客があるはずだ。私の部屋に通すように」
 入口の自動ドアが軽快な音を立てて開き、上品で豪華な貴金属と古美術品、そしてそれに劣らないほどの容姿のソフィアの前に、地下の倉庫に所せましと並んでいる発掘されたばかりの古ぼけた壷や彫刻のような貧相で薄汚れた一人の老人が現れたのはそれから一時間後のことである。
老人は、卑屈そうに言った。
「社長さんに会いたいのですがな」
「ムスタファさんですね?」
だが、応対に出たソフィアの案内で、老人がミッチェル・ウッドの部屋に入室した数時間後に、破顔一笑といった様子で出てきた二人が談笑しながら外出したのちのことを彼女は知ることもなかったし、また知らされることもなかった。

その深夜…。
 ミッチェル・ウッドにとって人の死は常に見慣れたものではあったが、いま足元に転がる死体は生かして置かなければならない重要な人間であったことは、彼の苛立ちからみて間違ったものではなかった。
「馬鹿者! 貴様たちは手加減を知らないのか!」
うなだれる二人の配下を怒鳴りつけるミッチェル・ウッドの声も表情も普段の彼らしくなく憎悪に近いもののように見えた。
「社長…申し訳ありません! まさか死ぬとは…」
「もうしわけありません!」
二人の男は、直立不動のままそう何度も繰り返すと押し黙ったミッチェル・ウッドを見ていた。
だが、やがて怒りが収まったのか、彼は再び口を開き、目の前の男たちにすばやく次のような命令を下しその場を離れて行った。
「こいつは行き倒れで処理しろ。この男の身元を洗いだして、杯の谷の秘密を知る奴は残らず消せ」
そう言い放つヨーロッパ人ミッチェル・ウッドの表情はいつもの冷静な美男子の顔に戻っていた。
もちろん、この一週間後に遺体で発見された身寄りもない一人の老人がムスタファであることは言うまでもないことである。
ミッチェル・ウッドはカイロ市内に数カ所の店舗と秘密のアジト(隠れ家)を持っていた。裏社会に生きる男としては当然であり、万一の場合を考えてのことである。
配下と老人をアジトの一つである地下室に残して階段をゆっくりと昇る冷酷なこの男の頭脳には、ある計画がすでにできあがっていたのである。
ミッチエル・ウッドは呟いた。
「ムスタファが持っていた黄金の杯は間違いなく当時の物だ。奴がどこからきたかが分かれば打つ手は幾らでもある…」
口を割るあと一歩という時に配下のミスにより老人を殺しはしたが、すでに二つの手がかりを得ていたのだ。
ミッチェル・ウッドはその天才的とも言える語学力と誘導尋問的な方法でムスタファの出身地がヌビア地方に違いないことを確信していた。
彼は、フスタファが事務所に初めて訪ねた時点でムスタファがコプト教徒が多いその地方の身なりをしていることを悟っていたからである。
ヌビア地方とは、ナイル川流域の古代の遺跡が点在するアスワンからスーダンのハルトゥームにかけての地域をいう。かつて、この地はエジプトの歴代のファラオが最も関心を寄せた地であった。
ヌビアを支配することは、エジプトに絢爛豪華な繁栄をもたらす事を意味した。
なぜなら、ヌビアは膨大な金が眠る地であったからである。そのため、ヌビアは経済的にも軍事的にも重要な地であった。
ヌビアとはヌブが語源である。ヌブとは金を意味する言葉で、当時この地が膨大な金の産地であった事を如実に示している。
ミッチェルは階上にある部屋のデスクに戻ると、見事な黄金の杯を大事そうに金庫から取り出し、受話器を握った。
相手はフランスにあるラメール商会にである。
「アランさん、私だ! あんたの望み通りの物が手に入りましたよ。それも今までに見たこともないような貴重な物がね」
「ほう…君がそのように言うとなると、よほどの代物と見えるが」、アランは強い方言混じりのフランス語で答えた。
「ええ…世界中が驚くはずですよ。これが世に出ればね。ただそれには少々時間をいただきたいんですがね」
「何かまづいことでもあるのかね?」
「いや、そうじゃないんですが、一つ頼みたいことがありましてね。あなたもよくご存じの谷本教授の事なんですが…。いま彼はフランスに滞在しているんですが、しばらくの間そちらに釘付けにしておいていただきたいんですよ」
「エジプト学者の谷本教授を?」
「ええ。いまエジプトに戻られると困りますのでね。一ヶ月ばかりで結構ですが」
「ほほう…知りすぎている事があると言うのかね? 分かった。足止めだけでいいのだね? 君の成果を期待しているよ」
アランはミッチェル・ウッドの情報が確かなものだと知っていたし、ミッチェル・ウッドも、アランがそうした期待を裏切らないことを十分承知していた。
ラメール商会のアランとミッチェル・ウッドは、互いに利用し利用されながらこの世界に生きた同類であり旧知の仲であった。
ミッチェルは電話の主に事のあらましを告げると電話を置き、目的達成の策を練り始めた。
彼の情報網はエジプト全土に広がり、ミッチェル・ウッドはいわば裏社会の元締めと言える存在であったのだ。
ミッチェルは再び電話に向かうとダイアル回した。
「はい。ルクソール第二警察です…ご用件は」、事務的な言葉が返ってきた。
「副署長をお願いしたいのですが…私は大英博物館のデビット・スミスです」
交換手にそう応じた彼の声と表情は、告げた名前と同じように全く別人のようであった。
シャリ・アブのもとをミッチェル・ウッドが訪ねたのは以上の様な画策の後であり、一人の老人の死から端を発した事件は、やがてエジプトは言うに及ばす、東京そしてヨーロッパをも舞台にしたおそるべき企みであり、そしてそれは、前代未聞の邪悪な野望の幕開けでもあった。

日本は梅雨を迎えていた。
健吾と詩織が帰国し、落ち着きを取り戻した半年後のある日のことである。
「健吾さん、メアリーさんからお手紙が来てるわ!」
書斎で、依頼された原稿の執筆をしている夫・健吾に妻・詩織が嬉しそうに声をかけた。
「奥さんから?」、若干小首を傾げた健吾は、詩織の弾む声に手を休めて応えた。
エジプト人タクシードライバーであるナセルからは時折手紙が届く。
つい一週間ほど前にも近況を知らせる手紙が来たばかりだったからだ。
ナセルは、健吾にとっても詩織にとっても、ファラオの国ならではの不思議なー未知なる経験といえるようなー世界をかいまみて、からくも共に九死に一生を得た友人である。
健吾と詩織、そしてナセルにとって、あの事件は今でも信じがたいほどの、まさに夢の中での出来事のように感じる恐ろしいものであった。
だが、悪人とはいえ三人もの人命が失われ、隠された古代の秘密が文字どおりナイルの深淵に消えた事は紛れもない事実でもあったのだ。
入室した詩織も首を傾げて手紙を差しだした。
「でも、どうしたのかしら? いつもはナセルさんからなのに…」
「この前はナセルさんからだった…変わったことでもなければいいのだが…」 一年前の帰国するその日、カイロ空港に家族全員で見送りにきてくれたナセルの妻・メアリーの優しそうな顔を思い浮かべて、健吾はエアメールに書かれている差出し人の名を言った。
 そして封を切ったその足元に何かが滑り落ちた。
それは、丁寧に畳まれた手紙の中から落ちたものである。
「写真だわ」
だが、拾い上げながらそう言った詩織の声がその途端、驚きの声に変わったのである。
「見て! 健吾さん、ナセルさんよ」
詩織の顔はその声と同じように驚愕に包まれていた。
「?」
 そして、詩織にただならぬものを感じた健吾も、次の瞬間驚きの声を発したのである。
「これは! ナセルさんに何が起こったんだ!」
健吾と詩織が額を寄せて見つめるその写真に写っているのは、コンクリートがむき出しの、まるで監獄とさえ思える部屋で頭部に拳銃を突きつけられた他ならぬナセルその人であった。
目を大きく見開き食い入るように見つめる健吾の脳裏には、ある事実が走馬燈のように駆けめぐっていた。
それは二十数年前、南国のある国で誘拐された日本人の巻き込まれた事件である。
ナセルと同じ状態の写真が掲載された週刊誌や新聞が全世界を揺るがし、テレビも連日報道した悲劇であった。
健吾は震える手でその写真を投げ出すようにして手紙を乱暴に読み始めた。
そして、その顔は、先ほど以上に引きつっていたのである。

健吾を乗せた成田発タイ・バンコク経由カイロ行きのジャンボ・ジェットが、悪夢のような知らせを受けた彼の気持ちとは裏腹の久々に晴れた梅雨の空に銀色の機体を運んだのはそれから三日後であった。
搭乗するまでの三日間は、健吾と詩織にとって一年ものように感じた。
遠い異国の地から切迫する手紙を受け取った健吾は、勤務する資料館に事のあらましを説明すると、いたたまれない気持ちで単身エジプトにむかったのである。
あらましと言っても、もちろん拳銃を突きつけられた友人を助けるためなどの事は言えるはずがなく、また一度だけしか訪れたことのない異邦人の民俗学者がその様なことができるはずがなかった。
さらに、事を公にするわけにもいかず、現地人と同じほどの生き方をしている谷本教授に相談するつもりであった。
 あくまで世話になった恩人に会うためとの理由で先回残した休暇を利用したのである。
健吾は、自分に何ができるのかは今は見当もつかず、ただナセルの妻の言葉に応えるため渡航する事で精いっぱいであったが、親友とも言えるナセルを見殺しになどできるはずもなかった。
本来なら心弾む渡航だったろう。
だが、空調も完ぺきに効いているはずの機内で、健吾にとって重苦しく、焦る二十時間もの飛行時間が始まったのだ。
気分を変えようと目を満席の機内に移した。
しかし、搭機する度にいつも感じた心が弾むはずの渡航とは、
(今回は違うのだ!)とは十分承知していた健吾ではあったが、楽しそうな会話が漏れ聞こえる機内にやりきれないものを感じた。
健吾は機外に目を転じ、
「一年前、帰国する時に見たエジプトの空のようだ…」と、ぽつりと呟いた。
そして、西に傾く夕日を小さな窓から見て、その気持ちはますます強く健吾の心を支配していった。
いま健吾は、メアリーから届けられた脅迫文を思い起こしていた。
そしてそれは、写真もさることながら、驚くべき内容を健吾と詩織にもたらしていたのである。

「夫を助けて下さい」との冒頭から始まるメアリーからの知らせは次のようなものだった。そして、その内容は悲惨な事を意味していた。
┌─────────────────────────────────┐
│ 「夫を助けて下さい。いま夫を助けられるのはミスター・ケンゴ…あな│
│たしかいません。夫・ナセルが勤務先から消えたのはこの手紙を書く二週│
│間程前の事でした。あなたもよくご存じのタニモト教授からのお手伝いと│
│いうことで、十日間の予定でナイルに浮かぶエレファント島に出かけたの│
│です。でも、帰宅の日になっても夫は戻らず、心配でエジプト考古庁に問│
│い合わせたのですが、当のタニモト教授はヨーロッパに出かけておられ不│
│在でした。ですからもちろん夫と約束などはされてはいなかったのです。│
│ その次の日です。同封した写真と脅迫状が届いたのは。 │
│ 脅迫状はアラビア語でこのように書かれていました。 │
│ 『あなたの夫の命は我々が握っている。助けたくば、友人である日本人│
│速見健吾に頼め。夫の失踪を警察や外部に漏らすことなどは賢明な人間な│
│らしないはずだ』 │
│ ミスター・ケンゴ、夫に何が起こったのでしょうか。夫は家族を愛する│
│平凡なタクシーの運転手です。人に恨まれたり誘拐されたりされる理由は│
│ありません。写真は二枚届きました。でももう一枚の写真はあなたにはと│
│ても見せることができないのです。 │
│ 犯人は、夫を助けられるのはあなただけだと言っています。 │
│ お願いです。お願いです。どうか夫を助けて下さい。 │
└─────────────────────────────────┘
健吾は片言の英語しかできないはずのナセルの妻・メアリーが苦悩し、必死で書いた手紙に涙で濡れた跡を認めていた。
健吾は再び心に固く誓っていた。
「僕に何ができるかは分からないが…でも絶対ナセルさんは取り戻す!」と。

砂漠のただ中にカイロ国際空港が見え始めた。成田を飛び立って二十時間もの旅であった。
途中、降り立ったのはタイ・バンコクの二箇所のみである。
半年前は期待で一杯であった魅せられし国も、いまの健吾には危険な異国の地であった。
空港ロビーを出て、あのときと同じようにタクシーの待つ車寄せに並ぶと、次々と出入りするタクシー運転手の男の顔と、気さくな笑顔のナセルの顔が、だぶって見えた。
乗り込んだタクシーもやはりプジョーだった。
行き先は、こここそカイロの下町と呼べるハンハリーリ広場の近くにある、ナセルの家であることは言うまでもない。
広場に近づくにつれ、路地裏とも言える道端には水パイプをくわえた老人や所在なさそうにうろうろする男たちが数多く見られる。
 決して楽な暮しではないのだろう。
 ここのバザール(市場)は、庶民の暮しを維持するための物が何でも手にはいることで有名である。
 健吾は、
「観光客が盗難に会えば、その一時間後には、それが品物としてこのバザールに売り物として出ている」と何かの本で読んで呆れたことを思いだしていた。

「旦那! 着きましたぜ」
同じタクシーでも、ナセルとは雰囲気のだいぶ違う運転手の声で健吾は下町に足を踏み入れた。
 広場や入り組んだ路地に所せましと軒を並べる店先に吊された衣類や小間物で通行に邪魔になるほどだ。
そんな頭を下げて歩かなければならないような場所で、見回した健吾の目に映る文字のそのほとんどはアラビア語である。まさに異国といわざるを得ない。

「覚悟はしていたが…まいったな」、ナセルの住所を書いたメモはあるが、この雑踏では右も左も判らない。
先ほどの運転手にしても、ハンハリーリ広場としか健吾の言葉は理解できてはいなかったし、大都会・カイロとは言ってもさすがにこの下町では英語が通じないのだ。
 ぼやき、キョロキョロするのはできる限り避けなければならない。が、そうとばかりは言ってはおれなかった。
さりとて、道行く誰にでも声をかけるというわけにはもちろんいかず、学生らしい現地人を捜す事にしたのである。
「すみません。お尋ねしたいのですが…」、健吾が声をかけたのは二人ずれの若い男女である。
片方の一人が小脇に本を抱えているのをめざとく見つけたのだ。
「?」
明らかに自分たちと顔も身なりも違う東洋人に、青年は一瞬驚きを隠そうとはしなかったが、すぐに相好を崩し、
「私たちに? 何でしょうか?」と、流暢な英語で返した。
聞き返す言葉も態度も好感を健吾に与えた。
「じつは、この住所を捜しているのですが…なにぶんにも地理に不案内ですので」、健吾は市内地図に記されている住所を指さして言った。
二人は健吾と共に地図をのぞき込んだが、すぐに顔を見合わせて、アラビア語で何事かを囁きあった。
「?」
「あ、失礼。驚いたんですよ。この住所は彼女の住んでいるすぐ傍のものですから」
世間は広いようで狭いものである。というよりも偶然であった。
ナセルの住まいの近くに住むナスターシャと名乗った娘は、健吾が思った通り、ここからそう遠くない大学の学生で、男も級友でグリーンといい、共に二十二才とのことであった。
「ここなら私が住んでいる場所からすぐです。ちょうど私も帰るところです。ご案内しますわ」
彫りの深い彼女は笑顔で健吾に告げた。
二人は、ちょうど健吾の弟か妹のような年齢であり、安心して同行しても差し仕えがないようであった。
一度は来た国とはいえ、建物も人々もそのすべてが異国情緒たっぷりである。しかし、本来楽しめるはずの下町の賑わいと喧争が、疲れた精神に食い込むように健吾を疲れさせた。
だが、健吾は二人の後を従いながら、ナセルと初めて会ったときの事を思いだし平静を装い従った。
「この住所はあのアパートですわ」
ナスターシャの指さす先に真っ白な三階建ての建物が見えた。
 なんの花だろうかどの窓辺にも赤や黄色の花がプラッタに飾られ、周囲のざわめきとは一種異なった雰囲気を持つ建物である。住まいする住人の生活ぶりを反映しているようで、何かしら気持ちが落ち着くのを健吾は覚えた。
「ありがとう。助かりました」
健吾は、親切な二人の学生に礼を言うとはやる気持ちを抑えるようにゆっくりと目指す建物に歩を運んだ。
 上品な玄関先のドアに近づきノックする手がふるえているのを健吾は感じていた。
「奥さん! ハヤミです。来ましたよ」
 健吾の声はノブに掛けた手と同じように震えうわずっていたはずである。
「アア…ミスター・ハヤミ…」、懐かしい彼女の声がした。
 だが足を踏み入れ入室した健吾は、声と同時に開いたドアの向こうにナセルの妻の青ざめた姿と声を認めて言った、
「ナセルさんは一体…」との自分の言葉の途中で、鋭く焼け付く痛みを伴う衝撃を首筋に覚え、その場につぷしたのである。
遠のく意識の中で聞いた最期の言葉は、
「キャー…ケンゴ!」と言うナセルの妻の悲鳴だけだった。
健吾は、周到に仕掛けられた罠にはまったのであった。
第2章  再び神秘の国へ